
『あそびにいくヨ!』本編で最初に流れ出た音楽は、緊迫感を煽るビートとオーケストレーションの掛け合いがスリリングな、ハリウッド映画も顔負けのBGMだった。闇夜の船上で繰り広げられる謎多きアクション・サスペンス・パートで使用されたこのBGM。本作のあらすじや舞台設定、そしてキャラクター設定などを鑑みるに、これから始まる“ちょっぴりエッチなコメディ・パート”に対する鮮烈なギャップを演出する目的もあるだろう。実際にコメディ・パートで使用されたBGMは、流麗なストリングスの滑らかな響きと小気味良いシャッフル・ビートを取り入れた、とてもさりげなく味わい深いナンバーだ。しかしながら、軽快なピアノを基調としたBGMではアニメ特有の〈おとぼけ〉感を演出し、生音の温かな質感を尊重することで、〈ネコミミ宇宙人の来訪〉というファンタジーでさえ、作中においてはあくまでも平和な日常の中の一コマであることを、視聴者に認識させている。また、沖縄の民族楽器・三線(さんしん)を使った劇伴を差し込むことで、舞台の地域性を音楽で解説していることも分かる。

日常の裏で蠢くハードなサスペンス。ほのぼのとした日常と隣り合わせのファンタジー。そして沖縄という地域性。それぞれの魅力を音楽の力で底支えするのが本作の劇伴だが、アニメ作品における劇伴は、まるで気の利いたインテリアのように、強く主張し過ぎず、さりげなく空気感を演出するものがベストだ。音楽家・菊谷知樹が創作したこれらのBGMは、シーンとキャラクター、そして舞台設定を精妙に結びつける接着剤として機能し、さまざまな切り口で語られる『あそびにいくヨ!』の世界観をひとつに纏め上げている。実に鮮やかな仕事だ。さすが、この業界の第一人者とも言うべき劇伴作家である。
そして忘れてはならない『あそびにいくヨ!』の主題歌「Now loading...SKY!!」は、金武城真奈美を演じる戸松遥、メルウィンを演じる豊崎愛生、チャイカを演じる寿美菜子、そして劇中のナレーションを担当していた高垣彩陽がメンバーとして活動するガールズ・ポップ・ユニット、スフィアが担当している。爽やかなメロディとブラス・アレンジが印象深い、スフィアにとってはちょっぴりオトナっぽいポップスに仕上がった。畑亜貴が作詞したキャッチーな歌詞と、虹音が紡いだ軽快で滑らかな譜割りの魅力を生かしながら、アッパーになりすぎない、落ち着いたトーンの歌声を聴かせた4人。スフィアのメンバーそれぞれの明瞭な個性と、この楽曲とアニメの世界観に合わせたそれぞれのこだわりが歌声として結実した主題歌だと言えるだろう。
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OP曲「Now loading...SKY!!」スフィア (寿 美菜子、高垣彩陽、戸松 遥、豊崎愛生) |
また、EDテーマはヒロインたちが歌うキャラクターソングとなっており、「心の窓辺にて」は双葉アオイ役の花澤香奈が担当。エリス役の伊藤かな恵が歌う「Happy Sunshine」、金武城真奈美役の戸松遥が歌う「想い出がジャマをする」等々、気になるナンバーが目白押しだ。また、挿入歌ではゲストキャラ、ラウリー役の茅原実里が70年代後期の傑作SFアニメ『キャプテンフューチャー』の名曲「おいらは淋しいスペースマン」(作編曲は『ルパン三世』などでお馴染みの大野雄二)を大胆にカバーしている。音楽に纏わる思わぬ仕掛けを読み解いていくのも、このアニメの重要な楽しみなのかもしれない。
![]() 「Happy Sunshine」 エリス(CV.伊藤かな恵) |
![]() 「想い出がジャマをする」 金武城真奈美(CV.戸松 遥) |
![]() 「心の窓辺にて」 双葉アオイ(CV.花澤香菜) |
“ある日突然空から美少女が降ってくる”正統派萌えアニメである『あそびにいくヨ!』は、音楽においても正統派萌えアニメの堂々としたセオリーに則りつつ、劇伴、主題歌、EDテーマなど、どれもがアニメの世界観にピタリと寄り添ったものばかり。アニメ音楽を楽しむ喜びを、オープニングからエンディングまで、たっぷりと享受させてくれる。『あそびにいくヨ!』は、そんな作品だと言えそうだ。
冨田明宏(とみた・あきひろ)
1980年生まれの音楽評論家/ライター。音楽専門誌の執筆をメインに、『ニュータイプ』(角川書店)や『アニメディア』(学研ホールディングス)などアニメ誌にも執筆。アニソン誌『リスアニ!』(ソニーマガジンズ)の企画/編集/ライティングも担当。NHKラジオ第一『渋谷アニメランド』のパーソナリテイー他、ラジオでも活躍。